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第46話 翌朝のオムレツと刻印③

Author: 花柳響
last update Last Updated: 2026-01-12 18:00:53

「……味はどうだ」

 向かい側でブラックコーヒーを飲みながら、征也が聞いてくる。その視線は、手元の英字新聞に向けられたままだ。

「……美味しいです。すごく」

「そうか」

 返ってきたのは、そっけない一言だけ。

 沈黙が、痛いほど耳に刺さる。

 昨夜、あんなに激しく求められたのに。私の名前を何度も呼んで、壊れ物を扱うように抱きしめてくれたのに。今の彼は、まるで何事もなかったかのように、分厚い氷の仮面を被っている。

(昨日の社長は、幻だったの……?)

 胸の奥がチクリと痛む。期待なんてしていないつもりだったけれど、この温度差に心がついていかない。彼はただ、契約を履行しただけなのだろうか。

「……食べ終わったら、その服に着替えろと言おうとしたが、もう着ているな」

 征也が新聞を畳み、ようやく私を見た。

 その鋭い視線が、ブラウスの襟元からスカートの裾、そしてストッキングに包まれた足先までを、商品を値踏みするようにゆっくりと舐める。

「似合っている……地味な家政婦の制服より、よほどマシだ」

「あの、私の制服はどこに……?」

「処分した」

 さらりと言われた言葉に、私はフォークを取り落としそうになった。

「しょ、処分……? どうしてですか。あれがないと、掃除ができません」

「掃除などしなくていい」

 征也はカップを置き、音もなく立ち上がった。

 長い脚が、私の目の前まで威圧的に歩み寄ってくる。

「今日から、お前は俺の秘書だ」

「……はい?」

 言われている意味がわからず、間の抜けた声が出た。

「ひ、秘書……ですか? 私が?」

「そうだ。俺のスケジュール管理、雑務、身の回りの世話。すべてお前がやれ」

「でも、私にそんな経験はありません。それに、家政婦として契約を…&
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